庄川挽物木地が検索で“出てこない”理由─情報発信が止まった地場産業をどう再生させるのか?─
「庄川挽物木地」と検索すると、上位に表示されるのは商工会や砺波市役所のページばかり。
実際に制作している工房や職人自身の発信はほとんど見当たりません。
これは、庄川挽物木地という伝統産業が高齢化と情報発信の断絶により“見えない産業”になっていることを示しています。
この記事では、なぜ工房が発信していないのか?
どうすれば将来につながる取り組みができるのか?
地域振興の観点から具体的な解決策をまとめます。

目次
なぜ庄川挽物木地は情報発信が弱いのか?
●① 職人の高齢化でWeb発信に踏み出せない
庄川挽物木地の職人は高齢化が進み、
- PC操作
- 写真撮影
- SNS運用
- Webサイト制作
に苦手意識を持つ方がほとんどです。
「ネット発信よりも、目の前の制作が優先」という気持ちは当然のことです。
●② 既存の販路で“何とか回ってしまう”
伝統工芸の多くに共通しますが、既存の寺社関係・問屋・固定客が買い続けるため、新しい販路開拓の必要性を感じにくいという状況があります。
結果として、
「今のままでいい」「変える必要はない」
という発想になりやすく、発信が止まってしまいます。
●③ 発信しても売上につながらない経験がある
過去に工房がサイトを作ったりSNSを始めても、すぐに結果が出ることは少なく、「手間の割に効果がない」という印象で終わってしまいます。
特に工芸品は認知まで時間がかかるため、短期で成果が見えず挫折しがちです。
●④ 若い世代不在で“発信担当者がいない”
職人の高齢化は技術だけでなく、“情報発信の担い手の不在”にも直結しています。
地場産業において、
若者の不在=情報発信が止まる
というのは全国の伝統工芸に共通しています。
情報発信の断絶は“産業の消滅”へ直結する
情報発信が弱い産地は、「作っている人はいるのに、存在が知られない」ことで、徐々に市場から姿を消していきます。
検索されない=存在しない
というのが現代のマーケットの現実です。
これは技術の優劣とは無関係に起きるため、まさに“静かに消えていく伝統産業”が全国で増えています。
庄川挽物木地も、このリスクを強く抱えています。
では、どうすれば良いのか?
ここからは、地域振興と伝統工芸の両方の観点から、現実的に実行可能な取り組みをまとめます。
工房に発信を求めない。「産地の発信体制」をつくる
工房が自ら発信するのはハードルが高すぎます。
そこで必要なのは、
● 産地全体での情報発信組織を作ること
(例)
- 「庄川挽物木地 公式ポータルサイト」
- 「庄川 木の文化プロジェクト」
- 「庄川挽物木地協会(仮)」
- 地域おこし協力隊の“デジタル発信枠”
● ポータルサイトの掲載内容
- 工房紹介
- 職人の紹介
- 制作風景の記事
- 商品ギャラリー
- 体験メニュー
- 歴史・技術解説
- 販売サイトリンク
これを地域単位で整備すれば、
検索結果にも「地域の顔」として現れるようになります。
外部人材・若手に情報発信を担ってもらう
工房内部で発信するのではなく、外部から力を借りる仕組みをつくるのが最も効率的です。
● 有効な方法
- 地域おこし協力隊の“広報・伝統工芸支援枠”
- デザイン系大学との連携(制作・写真・動画)
- 県内クリエイターとの協働
- 移住者や副業人材の参画
- クラウドソーシング活用
伝統工芸の復活はどこも、
「外部の若手がSNS・デザイン・ECを担当」
という形で成功しています。
体験型ビジネスに転換し「人が工房に来る流れ」をつくる
製品販売だけではなく、体験を通じて価値を伝える仕組みが必要です。
●提案できる体験プラン
- 1日木地挽き体験
- 親子向けワークショップ
- 工房見学ツアー
- 学校向け職人学習プログラム
- Airbnb体験(特に効果大)
- 若者向けの“弟子入り留学”プログラム
体験型にすれば、
認知度アップ → 将来の後継者発掘 → 新しい販路
という好循環が生まれます。
小規模EC・受注体制を外部が運用する
工房の人が触る必要はありません。
- BASE/STORES
- WordPressにカート機能を組み込む
- Etsy(海外向け)
- 地域共通ECサイト
- ふるさと納税返礼品
外部運営でも販売できる体制をつくれば、
「ネットの世界に産地が存在する」状態を作れます。
庄川の地域ブランドと結びつけて発信する
庄川挽物木地は
- 庄川の自然
- 木材文化
- アート
- 観光
- 移住
と極めて相性が良い産業です。
単体での発信よりも
「庄川=木の文化の町」という総合ブランド戦略
で発信した方が強力です。
工房に“発信の負担”を求めず、地域全体で支える仕組みが必要
庄川挽物木地が検索上位に出てこないのは、職人さんの努力不足ではなく、構造的に情報発信ができない状態にあるからです。
だからこそ、これからは、
- 地域全体での発信組織づくり
- 外部人材によるSNS・Web運用
- 体験型コンテンツ化
- 小規模ECの仕組みづくり
- 庄川ブランドとの一体的な発信
これらを丁寧に積み重ねることで、“見えない産地”から“発信される産地”へ変わることができます。
庄川挽物木地は、技術も歴史も価値も揃っています。
あとは「伝える力」を地域で補うだけです。